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第17回総会(平成28年4月25日開催)講演摘録
第17回総会(平成28年4月25日開催)講演摘録
「商圏の視点で見る丹波橋界隈」
講師:野間圭介氏 (龍谷大学 龍谷エクステンションセンター(REC)長 知的財産センター長 経営学部 教授)
龍谷大学は1639年に創設され、当時の総領は今の総領とは趣が変わり、学問、インテリ層のための教育の場として当大学をスタートさせた。
日本国内における初の教育機関は種智院大学であるが、一時期休業していたため、龍谷大学は、374年に渡り宗教弾圧も含めて途切れることなく続いてきた伝統ある大学と言える。世界的に見ても、年月でいくと大学の中では十指に入ると思われる。
浄土真宗の教えを建学の精神として、共生(きょうせい)という言葉があるが、龍谷大学ではこれを「ともいき」と呼んでおり、共に生きていくという基本姿勢がある。現在の龍谷大学は、この精神に基づき、積極的に地域の会に参加していきたいと考えている。
丹波橋通りには有名な大手筋商店街があり、丹波橋通りからハッピーテラダ、新しく出店した万代、フレスコ、近商と4店舗がある。更にコープ桃山店、阪急オアシス、深草商店街とイオンと、このエリアには特に食品スーパーが集中している。このような集積はなぜ発生するのだろうか。
大半の方はプロで社会戦法と言うが、例えば国道に自動車のディーラーが並んでいる、百貨店、スーパーが同じ場所に集中して建てるのはどうしてかといったことを考えていきたい。
まず、小売業を大きく分類するとダイレクトマーケティングとマスマーケティングの2つに分けられる。
ダイレクトマーケティングとは、一般的に言うと、通販、或いはインターネットショッピングのことを指す。(店頭販売の小売店でもダイレクトマーケティングは可能であるが、ここでは少し置いておく。)マスマーケティングとは、店舗販売のことを指す。店舗で店頭販売するか、通販、或いはインターネットショッピングするかということである。
まずダイレクトマーケティングのイーコマース、具体的に言うとアマゾンや楽天を想像すると分かりやすいが、これに商圏(店舗に集客出来るエリアのこと)はあるかというと、日本全国どこから頼んでも都市部を除くと送料が一緒なので、何処でも同じ条件で買えるという点で、商圏を考えなくても良いという事になる。
顧客について考えてみると、20年程前は某大学の卒業者名簿や大手企業の名簿が高く売買されていたが、今は高学歴・高所得者が優良顧客かというと必ずしもそうではなく、その必要が無くなった。
現在は、RFMという3要素で顧客を管理するようになっている。
まず一つ目が、リーセンシー(Recency)。最新購買日、最終購買日を指す。二つ目が、フリークエンシー(Frequency)。購買頻度のことで、月に何回購入するかがポイントになる。そして三つ目がマネタリー(Monetary)。これは購買金額のことで、プライスゾーン(価格帯)と購買金額累積の2つの要素があり、マネタリーを2つに分けると4種類になるが、現在はこの様な項目で顧客の管理がされている。
一方で、店頭販売には商圏という概念があり、何処から客が来ているかの把握が重要になる。
アマゾンや楽天市場の昨今の成長は、日本の小売業を圧迫しているようにも思えるが、日本国中には様々に分類された103万店舗の小売店があり、小売業全体の売上は141兆円にのぼる。
BtoC-EC(消費者向け電子商取引)というのは13兆円位で小売業全体の9.1%程度。楽天市場は日本最大の1.8兆円、アマゾンは1.4兆円、ヤフー!ショッピングが3,000億円強の状況である。そのため、大半は界隈の小売業が大成しているという事になる。
商圏が確定するとセールスプロモーション、広告などは商圏範囲内だけですれば良く、それ以上は無駄な投資となり、する必要がない。
商圏を拡げたい場合は、既存の商圏に隣接している側について、何処にポイントを絞るかを調べ、セールスプロモーションを実施することになる。
また商圏が確定されると、商圏内の人口・市場規模・消費者特性・他店舗の競合状況を明確に掴んだ上で計画を立て、既存の顧客管理についても、商圏の範囲内でどのようにすれば良いのかを考えていく。
出店戦略或いは現既存の商売を把握する際には、商圏の把握が最も重要であると言える。
兵庫県西宮市から半径約20キロの範囲内に、神戸・三宮、大阪の梅田・難波があるが、西宮市の住民が買物に行くのはどこが多いかをある高等学校が調査した。
距離から行くと50%、50%であるが、梅田が8対2という結果であった。西宮市の住民は、大阪商圏に入っていると理解した方が良いくらいである。
これについては、アメリカ市場でよく言われている議論で、日本の市場に適しているかは分からないが、引力モデルという万有引力の法則によるものと思われる。
これは距離の自乗に反比例して質量に比例するというもので、同じ距離の中でも市場の規模が大きいほど、より多くの力を持つというものである。
この調査における商圏については、大阪が大きくて神戸が小さいので、西宮は大阪の梅田や難波の商圏に含まれるという考えになる。
アメリカの場合は、マスとマスの間は砂漠みたいなもので殆ど人が住んでいないので明確に分類出来るが、日本は面の様に人が住んでいるし、小売店が広がっているので、必ずしもこういう図が日本の市場に適応されるということはない。
コープ桃山店、近商丹波橋店、フレスコ丹波店、ハッピーテラダ伏見店の4店舗において1年間の来店客調査を行った。
まず集客時間については、開店時間などが違う為一概には言えないが、開店直後に少しあり12時から1時の間も少しあり、その後下がって15時以降増加していき17時以降は仕事帰りの人が来るといった状況であった。
4店舗の中でもそれぞれ特色があり、午前中からお昼までは沢山集客があるが、後は減少傾向で、夕食の準備の時間帯や17時以降はどんと減ってしまう店舗もあれば、一方で開店直後やお昼も多く17時以降はお昼よりも多い店舗もある。立地としては近い所にあるが、客の時間帯が違う事が分かれば、その客に合った商品の品揃えや売り方があるのではないかと思われる。
少し横道に反れるが、客の滞在時間と売上の関係について考えてみる。
客の滞在時間を15分、20分、30分、45分と区切って見たところ、滞在時間が増すほど平均売上金額は上がるという結果が出た。大手スーパーなどは日曜日にイベントを開催し、ミニコンサートや落語会などを開いたりしているが、これも長居をして貰う為の工夫であると言える。
一方で客の厳しい目があり、それぞれの店舗毎に青果・鶏肉・牛肉・魚介類など商品分類別に5点満点評価の調査を行った。
その結果、店によって客はここは魚介が良いとかここは牛がいいなど、厳しく評価している事が分かった。つまり、店舗として商圏内の客の要望が分かり、一般論ではないという事が分かる。
話を元に戻すと、商圏を知るためにはまず、店舗の来店客調査で市・町・何丁目・郵便番号を尋ね、そうして知り得た郵便番号を面とし、その中心にあたる所を点に置きかえるとそこの座標が計算でき、ある住所が経度と緯度でどういう点であるのかが分かる。
一方で先ほどの4店舗について、店舗の場所を地図上に指し示すと、経度を求めることが出来、郵便番号と店舗について緯度と経度を一片一片求める事が出来る。これをピタゴラスの原理で距離を測るが、地球は丸いので三角の定義ではなく丸身を考慮して計算していく。
例えばイズミヤから石田大山町だと4.237kmでざっと4kmであり、方角では、店舗から見ると、南北では南側、東西では東側である。
商圏というのは、店舗を中心に十字を引き4分類して東西南北どのエリアに居るのかを計算する事が可能である。
一次商圏は、実際マーケティングをする際には購買金額などの要素が入るが、人数だけで見て、全来店客の60%を一次商圏、90%を二次商圏、95%を三次商圏とすると、店舗Aは一次商圏が1.030km、二次商圏が2.955km、三次商圏が5kmと計算する事ができる。
C店とD店を比べると、C店はD店より一次商圏は広いめであるが、三次商圏はD店の方が大きい事が分かる。こういったことも計算することが可能である。
イズミヤ伏見店は、油小路一号線を超えない範囲が一次商圏で、三次商圏になると京都駅を越え、宇治川を越えている。ここから先からも来ているが、それを商圏として知らしめるのはどうだろうか。
次にコープ桃山店では、一号線を越えない範囲で、イズミヤを一次商圏として見ると、イズミヤの外側からは来ていない事がわかる。三次商圏までみると、広いエリアから客が来ている事がこの調査から分かる。
近商は面白い現象で、一号線を越えずに、非常に狭いエリアから60%の方が来ているにも拘らず二次商圏、三次商圏を見ると広い範囲からも客が来ている事が分かる。
ハッピーテラダは、近商に比べると一次商圏は広いめであるが、三次商圏まで見ると、狭いエリアから来ていることが分かる。
イズミヤ・近商・コープ・ハッピーテラダを1つの円の中に書いてみると、一次商圏がオーバーラップしている事から、同じ市場の中で切磋琢磨している事になるが、一方で商業集積のお陰で客が沢山来ているという事にもなる。
ここまでは一般的な商圏の話で、方角で見る必要もあり、商圏で4分類して統計をしていると話をした。
しかし人数比で見ると、これらの店舗は国道方向の商圏が狭く、南に商圏が広がっており、南西方向に広い商圏を持っている。つまり、商圏の狭いところから客が多く来ている事が分かる。こういった事から、そのエリアにどういった戦略を打ち、どのように商圏を広げるかについては、そのエリア毎に則した方法を考える必要があると言える。
同じ様な手法で考えてみると、龍谷大学の場合、深草キャンパス・瀬田キャンパス・大阪梅田キャンパス・東京でも会場を用意して公開講座をしているが、そのうち一番広い商圏は東京で、三次商圏を見ても88kmで最も広い商圏を持っている。
瀬田キャンパスの商圏は最も小さく、一次商圏は深草キャンパスの二次商圏90%・49kmの中に含まれる程になっている。言い方を変えると、瀬田から深草まで勉強に来ている人が少なくない事が分かる。
この統計には関係ないが、例えば東京会場には長崎・北海道・山口など遠方から受講に来てもらっており、大阪梅田キャンパスには北海道・長崎・東京・神奈川・長野・山口・静岡からも受講に来てもらっている。深草キャンパスは北海道・宮城・長崎・佐賀・福島・福岡・山口から、瀬田キャンパスは商圏は狭いが、長崎・福岡・福島・東京・山口・埼玉からも受講に来てもらっている。これを地図に載せてみると、兵庫県の西は商圏から外れているが、ほぼ近畿一円から受講しに来て貰っていることが分かる。また、東京会場はほぼ関東圏が商圏という事が分かる。
我々の調査によると、丹波橋界隈での食品スーパーは激戦地であり、消費者にとっては、店舗を選べるメリットがあるが、業者にとっては競合するだけではなくて、集積効果を狙って特色をどう出していくかによって好条件になる可能性があるという事が分かった。
そういった時にマーケティングミックスの4P、4Cを考慮して商圏を意識する事が大切である。
また商圏外の所に広告をしても意味がなく、的確に商圏を掴み宣伝・広告を効果的に活用する事が重要である。商圏を広げたいと考える時は、国勢調査による地理条件や町丁別人口や、買物調査の商業統計による商品分類ごとに1世帯が1年間に幾ら使うかといったデータを利用し、それに基づいて何処にめがけて商圏を広げれば良いのかを検討すれば良い。
これらの事を総合して商圏が的確に把握できれば、商圏内の顧客のニーズに沿った品揃え、きめ細やかなサービスが出来るのではないだろうか。