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第20回総会(令和元年5月10日開催)講演摘録
第20回総会(令和元年5月10日開催)講演摘録
「なぜ今、「SDGs」か ~社会の変化と暮らしの経営~」
深尾 昌峰氏(龍谷大学政策学部教授 龍谷エクステンションセンター長)
私自身は、龍谷大学の政策学部という学部で教育をしており、今は龍谷大学のエクステンションセンターのセンター長を担当している。
地域づくりをするための色んな仕組みを作るとかエコシステムを作ることもしている。
経済財政諮問会議にて、その制度や仕組みづくりについても検討している。
現在、SDGsが国連の開発目標として世界的に共有をされ、国連より17個の目標が提示されている。
全部の目標に対して、みんなが納得してこういう社会を作りたいということで世界的に共感を集めている。日本にとってこのSDGsってどういう意味を持つのかということを説明する。
今まで国連が決めてきた開発目標というのはどちらかというと先進国から途上国に対してというベクトルだった。要は、豊かになった者がかわいそうな人たちの為にどうするかっていうようなベクトルで今までは考えてきた。
SDGsでは、住みつづけられるまちづくり、まさしく皆さん方と一緒にこの協議会で話し合っているが、それはもう途上国だけの問題でなくなっている。環境問題はもう経済活動をある意味では左右している。その意味では、先進国といわれる我々の国もかなり大きな影響を受けている。その中で私たちの暮らし、地域での暮らしや企業活動について説明する。
2005年を100とした人口推計を、今どうなっていてこれからどうなっていくかっていうことを表したデータがある。子供の数は2005年の数を100とした時に2020年には75%になっている。これは少子化現象を示している。生産年齢人口といわれる15歳から64歳の人口も87%になっている。一方で65歳以上の方々は139%になり、75歳以上の方は161%、1.6倍になっている。
これが今後どうなっていくのかと言えば、2030年くらいになると75歳以上の方々1.9倍になる。要は高齢化がどんどん進んでいく。これは、高齢化が進むとか人口減少が進むというと、山間地域というか田舎の話とイメージされる。今、買い物難民とか交通の足が無くなったとか言って大騒ぎをしている山間地域が日本中にたくさんある。実は、今から高齢化が襲ってくるっていうのは田舎の話ではない。
田舎の山間地域で高齢化が進んで大変だって言っている。2005年を100とすると例えば2030年のこの数字はだいたい101とか102である。要は、田舎の山間地域ではもう高止まりしている。この数字はどこが牽引していくのか。特に高齢化や少子化を牽引していく町はどこかというと、まさしくベッドタウンである。
亀岡市について人口推計した。全国平均で75歳以上の方々が、例えば1.9倍くらいの数字であるが、亀岡市では2.47倍である。この数字は、人口が多い町、言わばベッドタウンである。急激に高齢化が進展化するっていうのが今からこの10年くらいの私たちの国の形である。
伏見区について人口推計した。伏見区では、2015年を100とすると、2045年には75歳以上の方が202%、倍になる。オリンピックが終わったら、後20年で実はこれくらい急に構造が変わっていくだろう。2060年の日本の人口は大胆な移民政策を取らない限り、大体8600万人くらいの人口になり、高齢化率は40%を超える社会になる。例えば、伏見区では、75歳以上の方が200%、2015年、今から5年くらい前の数から2倍くらいの町になる。そうすると不動産の流通のあり方とか暮らし方とか交通のあり方とか、我々がまちづくりをしていく上で必要となるインフラ、商品、いろんなことが変わってしまう。
社会保障の観点から見ると、社会保障に関するコストは日本全体で117兆円ぐらいである。これが2040年に185兆円から186兆円ぐらいかかり、今の制度をそのままスライドすると、いま日本の国家財政って100兆円とした場合、そのうち税金でどのくらい負担しているかっていうと、介護保険料で出しているのが70兆円くらい、税金で出しているのが47兆円くらいである。20年後、今の福祉の構造をそのまま持ち込むとどうなるかっていうと、税金で80兆円くらいになる。これは不可能なことである。今、税収でだいたい50兆円、後の550兆円は借金であるので、実質、全部を当てても足りないって状況になる。要は、確実に私たちの社会の構造が変化していくときに、SGDs的に誰一人、取り残さず安心して暮らしていくかって問題を、私たち日本の社会はどういう風に考えるかっていうフェーズになる。
パリ協定の温室効果ガスの削減目標がある。日本は2013年に排出した温室効果ガスの26%の削減を2030年まで、あと10年で達成することになっている。長期目標は2050年までに-80%である。パリ協定の目標とは、産業革命以前からの地球の平均気温の上昇を2℃以内に抑えましょうというものである。そのためには、最低これくらいの温室効果ガスの排出を抑制しなければいけないと言われている。-80%とは、どういうことかっていうと物を燃やせない社会である。だから、ヨーロッパの自動車メーカーはこぞって何年までにEV化をしますって宣言している。
世界銀行は今どう動いたかというと、世界銀行は油田開発に投資しなくなった。私たちの環境がどんどん変わって石油を使用する環境でなくなっている。石油は単なる黒い液体になりつつある。経済界も石油産業からどんどん撤退している。日本ではメガバンクはまだまだ石油産業に投資し大量の債権を持っているが、世界のマネーの流れが確実に変わっている。
企業の評価については、環境保全に貢献する活動、例えば二酸化炭素の削減など重要な評価基準になってきた。機関投資家がこの評価基準に従って企業に対して投資を行なっている。CSV(共有価値の創造)を作り出すことが企業の成長戦略の中心になった。例えば、キリンビールはノンアルコールビールを売り出した。初期のノンアルコールビールは美味しくなく、今までのマーケティング理論では消費者に受け入れられる商品作りの考え方とは反するものだった。しかし、キリンビールはノンアルコールビールの販売を社会の共通価値を作り出すという考え方で販売した。つまり、飲酒運転の減少や飲酒運転による交通事故の減少を社会の共通価値とした。このように、人口構造や環境構造の変化している時代の流れで社会に役立つ共通価値を作り出すマーケティングは主流になりつつある。
2013年以降、消費者のみならず社会全体に価値ある商品やサービスを企業が提供するようになってきた。企業活動のキーワードとして、CSV(共有価値の創造)を実現することになった。自分だけでは実現できないので、他の企業や行政や地域と一緒になって知恵を出し合って取り組む必要が出てきた。これが今後の企業の成長戦略になりつつある。
リスクとリターンのみ考えて儲かれば良いとする経済収益からより良い社会を創造していこうとする社会的収益が重視されている。我々の社会を良くしていこうとするESG投資のような社会的投資を流通させることが経済戦略のみならず国家戦略になる。
日本では社会的投資は実現されないと思われる方も多いかもしれない。最近、野村証券が社会的投資に関連した金融商品を売り出した。その結果、機関投資家より4日間で683億円を調達した。このことからも機関投資家は経済的投資から社会的投資への意識が着実にシフトしていることがうかがえられる。
龍谷大学でも学生が社会的投資となるビジネスを始めた。それは、障害者の新たな就労支援の場として靴磨きビジネスの創出である。これまで1万5千円だったメンバーの月収を15万円にした。
SDGsの理念を実現するため、らくなん進都協議会の地域や企業、行政とともに一緒に考えて投資家に社会的投資をしていただけるように展開していきたい。