第4回総会(平成15年4月23日開催)講演摘録

「地域戦略としてのベンチャー振興と京都の課題」

講師:塩澤 由典先生(大阪市立大学大学院 創造都市研究科長)

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1.なぜ今、ベンチャー振興なのか?

  • 従来のマクロ経済政策がうまくいかなくなり、産業の空洞化・輸入商品との競合等、様々な問題を抱えている。日本の産業界にあっては、ベンチャーしかないのが現状である。新産業・新事業を大胆に試す以外にない。

2.これからの産業変動

  • 今後は製造業よりも、ソフト・映像生産、レジャー・観光、企業向けサービス、研究開発、介護・医療など広い意味でのサービス業(第4次産業)の比重が大きくならざるを得ない。
  • ハイテク製造業、IT関連だけがベンチャーでは必ずしもない。広い意味でのサービス産業、第4次産業といわれる分野にどのくらい新たな切り口を持ち込めるかが重要である。

3.地域戦略としてのベンチャー振興と京都の課題

  • ベンチャーがそうせい叢生するためには、以下の4つの条件があり、これらが一定の地域に集積することで、起業を促す「ハビタット(生態環境)」が形成される。京都市全体で見ると、以下に示すような素晴らしい可能性を持っている。

【意欲的な起業家】 京都の魅力、ベンチャーの伝統、京大・同大・立命大 など
【リスクを取るVC】 フューチャー・ベンチャー・キャピタル など
【V企業で働こうとする優秀な人材】 京大・同大・立命大など、学びたい町
【新製品を購入する買手】 京セラ・オムロン・島津製作所など

  • これらを生み出してきた京都の風土や精神を活かすことで、優れた仕組みやハビタットを形成していくことは可能である。一方、京都市南部に焦点を当てると、以下の利点、難点が挙げられる。

利点: 展開可能な面積、伏見、核となる企業(京セラ、宝酒造など)
難点:KRP、京大(吉田・桂)、芸大から遠い。
   →新たな産業を育てる核になるものが見えない。文化的中心から離れている。

  • 展開可能な面積があるものの、一定の敷地に、「他からの流入を望む」だけでは不充分である。
  • また、製造業中心でいいのかという問題もある。サービス産業、21世紀型の産業を生み出す力を地域として持つべきである。
  • 高度集積地区における政策課題はいろいろあるが、行政主導で、現在の事態を打開することは限界がある。税金でやれる範囲・規模は小さい。一方で税金を投入しすぎると、財政的に破綻する。
  • 小さなものでも独立採算でうまくいく事業があればいい。そのような事業を小さく始め、後に拡大していくことを目指すべきである。